ソフトバンクのスプリント・ネクステル買収について、孫正義社長が、2012年12月30日の日経新聞1面でインタビューに答えているので見てみましょう。
(1)海外の携帯電話事業を意識した時期
約1兆6千億円を投じて米携帯電話3位のスプリント・ネクステル買収を決めました。
「2006年にボーダフォン日本法人を買収して携帯電話事業に参入した当時から将来の世界戦略を考えていた。最大2兆円あった借金を減らし、ようやく次の手を打てる段階に来た。日本での成功モデルを海外で生かしたい」ソフトバンクの孫正義社長の発言を見てみると、ボーダフォン日本法人(現在のソフトバンクモバイル)を買収した時から世界進出の構想を暖めていたようです。ソフトバンクは海外企業にも出資を積極的に行っており、金額面を除くと現実的に見ていたのかもしれません。
(2)米国の人口増加とドメイン(事業領域)の再定義
事業を行う国を再定義
なぜ世界で規模を追求する必要があるのですか。
「日本は50年に人口が9千万程度まで減少するが、米国はまだまだ増えると予想されている。米国進出後は日米を『我が国』と定義し市場を増やしていく。内需が縮小する日本に引きこもることがリスクだ。ソフトバンクは海外事業を成功に導き、日本企業のロールモデルになりたい」ソフトバンクの孫正義社長は、スプリント買収の理由の一つとして、日本国内の人口縮小をあげています。市場規模を見る際に、人口は重要な要因になります。
人口増加が重要な理由
ソフトバンクの稼ぎ頭である、携帯電話の収入は単純にわけると以下のようになります。ソフトバンク携帯電話事業の収入=人口×シェア×1人当たりの携帯使用料全体の人口が増加していれば、シェアが一定であっても携帯電話事業の拡大が見込めます。また、孫正義社長は、米国進出によりソフトバンクの事業領域の再定義を口にしており、米国市場を意識した発言をしています。その背景について見てみましょう。
(3)世界のIT企業を意識
「我々は国内の通信会社だけと戦っているわけではない。アップル、グーグル、フェイスブックなどすべてのIT(情報技術)企業がライバルだ。」ソフトバンクの孫正義社長は、自社のライバルを通信会社だけでなく、全てのIT企業がライバルであると定義している点は注目かもしれません。
アップルや、グーグルを見ると明らかですが、iPhoneやアンドロイドとモトローラ買収により、この2社は皆さんの身近になっていると思います。これらのIT企業が、通信会社に影響力を及ぼしている事は、誰しもが認めるところではないでしょうか。
(4)ポートフォリオと世界一を意識
「特定の国や業種に偏っていては世界的な競争に敗れ、買収されるリスクも高まる。モバイルの分野で断トツの世界一になれば、アップルやグーグルも一目置くだろう」ソフトバンクの孫社長の発言で注目すべきは、事業ポートフォリオについて触れている点です。孫社長は、国だけでなく業種の偏りのリスクを指摘していますが、日本国内を見るとソフトバンクな総合IT企業でなければ、これは難しいでしょう。
注目すべきは、モバイルの分野で断トツの世界一を目指すと語っており、モバイル事業の事業拡大を示唆している発言と受け取れます。
(5)日本の電機企業の弱点
国際競争の中で電機など日本企業の劣勢が続いています。
「海外勢に技術力で負けている事が心配だ。スマートフォン(スマホ)などは本来、日本のお家芸であるべきだった。アップルのiPhone(アイフォーン)に使う部品や素材は日本製が大半を占めているが、製品をデザインしマーケティングする力がすっぽり抜け落ちている」ソフトバンクの孫正義社長は、日本の電機企業の弱点について語っていますが、デザインとマーケティングについては、よく言われる話ですね。
(6)日本の技術政策の問題点と規格
「日本の技術政策にも問題がある。過去の携帯電話は日本独自の規格でガラパゴスと呼ばれ、海外勢を排除してきた。その結果、日本企業が海外進出に出遅れてしまった。もう一度世界で戦う気概を取り戻さなければならない」
ソフトバンクの孫正義社長は、日本の技術政策に苦言を呈しています。政策は、その産業のルールを定めるものですので極めて重要であると言えます。日本の携帯電話政策は、失敗したと言えます。
ガラパゴス携帯に多額の投資を行っているため、スマホへの急な切り替えを行う決断の遅れにも繋がったでしょう。その結果、日本の携帯電話は日本国内でも急速にシェアが低下しています。
ソフトバンクがスプリントを買収した理由について、孫正義社長が語っていますが、スプリント買収後にどういった販売策を打ち出すのか注目したいと思います。孫正義ソフトバンクと経営者の仕事に続く。
スポンサードリンク
- 日本独自の規格
- 海外勢を排除し、日本のみで売れる携帯電話を製造
- iPhoneのヒット
- スマホが主流になるが、日本企業が出遅れる
- シェア低下
ガラパゴス携帯に多額の投資を行っているため、スマホへの急な切り替えを行う決断の遅れにも繋がったでしょう。その結果、日本の携帯電話は日本国内でも急速にシェアが低下しています。
ソフトバンクがスプリントを買収した理由について、孫正義社長が語っていますが、スプリント買収後にどういった販売策を打ち出すのか注目したいと思います。孫正義ソフトバンクと経営者の仕事に続く。
0 件のコメント:
コメントを投稿